6−4.スタンツ
 
 各班の出し物のことで、寸劇と呼ばれるように、短い時間をうまく使って即興で作ります。参加者が主役の“失敗も楽しいプログラム”であり、それぞれの持ち味が輝き、『私たちのファイヤー』になります。また、仲間で協力して、限られた時間内に筋書きを考え、ありあわせのもので小道具を作るスタンツは、グループワークトレーニングとしても大き
な価値をもちます。
      スタンツは、寸劇であり、歌やゲームではない
 スタンツのとき、歌を歌ったり、ゲームやなぞなぞをするグループが少なくありません。これらは、やっている本人と、指名された人は楽しいのですが、観ている他の人はシラケてしまうことが多いようです。スタンツの中で歌や踊りがあってもよいのですが、それはミュージカルや創作であるべきです。歌だけ、踊りだけでは困りますスタンツでは、自分たちの発表をみんなに見せて、楽しませることを考えましょう。

 
スタンツの効用
 
@ 創造の楽しさがあります。
A 仲間との協力やチームワークの喜びが得られます。
B 自分や仲間の隠された持ち味を発見できます。
C 表現能力が高まり、積極性が身につきます。
 
スタンツ作りのポイント
 
@ 人まねでは意味がありません。自分たちの力でその場にあったシナリオを作り、“私たちのスタンツ”といえるものにします。
A グループの全員が何かの役をもちます。
B 立案、練習時間は1時間位が適当。長くなるとだれてきます。
C 上手よりも、メンバーの気持ちとアンサンブルが大切です。
D せりふを全て覚えるよりも、流れとポイントのせりふだけ決め、後はアドリブでやるほうが持ち味が出やすくなります。
E 小道具は上手に使えば効果がありますが、主役は人間です。準備に手のかかるものやファイヤー中の保管に手のかかるものは避けます。
 ・ 事前にグループ毎に小道具はまとめておいておき、スタンツが終わったら再びその場所に返すようにして、ファイヤー中は手に持たないようにします。
F 具体的なヒントを与えると作りやすくなります。
G 時間は3〜8分とし、「5分」と時間を厳守させて作らせます。終わり方が大切で、時間が来たらスパッと切る方がよいでしょう。
H スタンツは観る人にとっては受け身のプログラムなので、連続2つが限度です。2つ位やったら、全員で行うゲームや歌、アクションソング等を1つか2つやります。

題材
 
@ キャンプ生活の活動での成功や、失敗したことを主題にします。
A キャンプでのエピソードや感動したことを取り上げます。
B その場所や人物、キャンプの特徴をアレンジします。
C ニュースや世相等を風刺します。
D 手作りの踊りや替え歌を、自然の衣装をこしらえておもしろく演じます。
 
表現方法
 
 歯切れのよい展開をします。
@ 演劇的表現(ストーリーをおって展開)
A ショー的表現(物語性は少ないが、まとまった演技が見物)
B マスゲーム的表現(集団演技がポイント)
C スケッチ的表現(風俗、事件、生活等を描写して表現)
D ミュージカル風表現(歌とポイントのせりふで)
E ナレーションつきパントマイム
F テレビレポーター風表現
G その他
 
スタンツの作り方
 
@ テーマを決める。題材を選ぶ。
A アイデアを練る。
B 筋書きを作る。
 ア.起(どう始めるか)、承(徐々に展開)、転(ヤマ場を作る)結(結末・オチ)を考える。
 イ.筋書きに沿った「オチ」や「幕切れ」を先に考える。
 ウ.パロディ、ナンセンスにしてみる。
 エ.逆手を使う。
C 役割分担をする。
D 立ち稽古をする。
E 本番
 
スタンツの演じ方
 
 班がいた場所か、ファイヤーの周りを舞台にし、顔はファイヤーの方へ向けます。
(炎を背にすると、逆光になり見えなくなります)。
@ 言葉ははっきりと、大きな声で。
A 多少オーバー気味に。中途半端はダメ。
B 堂々と思い切って、大まじめにやります。(自分で笑ってはダメ)
C 相手役があり、自分の役があることを忘れません。
D 間やタイミングを外さないようにします。
 
【スタンツを観るマナー】
・ 私語や下品な野次は謹みます。
・ ふざけません。
・ 自分たちの準備に気をとられず、他のグループの演技をよく観ます。
・ スタンツが終わったら、惜しみない拍手を贈ります。
・ 出番になったら、すぐに出て、時間を守ります。
 
表彰
 
 表彰に当たっては、その頑張りを評価します。
@ 文面を工夫した賞状を贈ります。
A 個人賞として、演技賞や努力賞、トチリ賞等があっても楽しくなります。
B さわやかで手作りの(クラフト等)賞品を出します。
C 表彰式の形式も工夫して、ユーモラスに行います。
 
【評価のポイント】
@ 時間は守られたか。
A 題材はそのグループに合っていたか。
B まね事でない創意工夫がなされていたか。
C グループのチームワークと熱意はどうだったか。
D 構成や演技はどうだったか。
E 準備、練習、打ち合わせはどうであったか。
 
スタンツ作りの練習法
 
 スタンツが初めての参加者では、スタンツの作り方が分からない為にうまくできないことがあります。そこで、最初にスタンツの作り方の演習をしておきます。
 
演習1.スタンツって何?(説明)
 スタンツとは、班の出し物のことで、班のみんなが協力して作ります。あまり受けないスタンツに、クイズと歌があります。これらは、やっている人はそれなりに楽しいのですが、当てられた人だけ楽しいかあるいはよっぽど上手でない限り観ている人はシラケたり飽きてしまいます。そこで、スタンツでは観ている人を意識して、観ている人が感動する(涙する、ほのぼのとする、楽しい、おもしろい、笑いが出る……といった心が動かされる、ウケる)ことをねらって作ります。スタンツでは、自分を表現することのできる即興劇がよく行われます。
 歌を使う場合には、ミュージカル風に使ったり、替え歌にして楽しい踊りをつけてください。
 
演習2.何に使えますか(創造力)
これは鉛筆ですが、「書く」こと以外に何に使えますか。

 いろいろな使い方が考えられます。このように新しいものを生み出す力を“創造力”といいます。他の人がもっていない力、それが個性や持ち味になります。スタンツは、創造力を発揮して作ります。
 
演習3.キャンプから思い浮かべる言葉は(題材選び)

「キャンプ」から、どんな言葉が浮かんできますか。4つ考えてください。

  スタンツを作るためには、題材選びが大切です。スタンツのテーマ(やりたいこと)が決まったら、そこから思い浮かべることのできる題材を捜し出します。
 
演習4.何が起こったの(お話し作り)
 今出た4つの言葉を1つずつ使って、お話しを作ります。
・どこに、だれがいましたか?
・その人は何をしていたのですか?
・何か事件が起こりました。どんな事件ですか?
・それは結局、どうなったのですか?

 スタンツでは、筋書き(話の流れ)が決まっていないといいものはできません。話し作りの一つに“起承転結法”というのがあります。「起」は話の始まりで登場人物や場所の説明がなされ、「承」で背景や日ごろの行動が語られて話が進みます。「転」は、クライマックス、ヤマ場です。話しの中心となる事件や何か変わったことが起こります。「結」になると、そのお話しの結末が語られます。
 
演習5.白紙1枚で(演技)
 ここに白い紙が1枚ありますが、この紙を
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に見せてください。

 スタンツは、他の人に見せます。そのためには、人に見せようと意識すること、大まじめにやることがそれらしく見せるコツです。演技はスタンツの基本です。ファイヤーで行うスタンツは、暗くて広い場所で行いますから、みんなに分かるように少々オーバーな位に大きく動くことと大きな声を出すことが大切です。また、ファイヤーの炎を背にすると逆光になって見えなくなりますから、炎の方に顔を向けて行います。舞台は、班がいた場所か、円の中に入ります。
 
演習6.私はポスター貼り(総合)
 (起)ポスター貼りがやって来ました。(承)いろんなところにポスターを貼って
います。(転)ところが、押しピンを落としてしまいました。一生懸命さがしますが
見つけることができません。(結)とうとうあきらめてベンチに座ったら、押しピン
がお尻に刺さってしまいました。
 このお話しをグループ毎に演じます。場所はどこなのか、どんな人が出てくるのか
等、お話しをもう少し膨らませて、全員が何かの役をもってください。もちろん、ナ
レーターやせりふを使ってもかまいません。

・ 筋書き作りと役割分担
・ 練習
・ 発表 
・ 簡単に評価します。
 
資料 スタンツの例
 
 男性、地面に縮こまって転がっている。女性、その近くに並んで立つ。
アナウンサー「仙養に行っている××さんを呼んでみましょう」
レホ°ーター「はい、こちらレポーターの××です。今日は、雨の中をキャンプする団体があるというので仙養に来ています。さっそく、ここにおられる方にインタビューしてみたいと思います。きょうはどちらからこられましたか?」
女性1「福山からです。雨が降っているので中止になることを期待していたのですが」
レホ°ーター「ところで今、何をされているのですか」
女性2 「テントの立て方を習って、これから自分たちで立てるところなんです」
 この後、いくつかのインタビューを繰り返す。
レホ°ーター「それでは、キャンプを立てるところをおってみたいと思います。カメラさんお願いします」
 女性、テント(男性)をひこずったり背負ったりして移動した後、荒々しくテントをほうり出す。
女性3 「テントを出しましょう」
 男性の服を脱がせる。
女性1 「さあ、テントを立てるわよ」
 女性はテントをおこし、男性は手を伸ばしてテントの形を作る。
女性2 「そっちの綱、引っ張って」
 テント、引っ張られた方へ傾く。
 テント張りの様子を繰り返す。
女性3 「入り口を閉めるのを忘れているわ」ジッパーを上げる。
女性1 「やっとできたわ」
 と言ったとたん、女性2がテントにつまずき、テントが倒れる。
 再び、テントを立てた後、女性はテントの中に入る。
女性3 「もう大丈夫ね。それじゃ、今日習った歌を練習しましょう。」
 といって、女性は歌を歌い始める。
雨の役の男性が「雨!雨!雨!雨!」と叫びながらテントに飛び込み、テントと一緒にグシャッとつぶれる。
 最後に全員立ち上がって、エールをかける。


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