6−5.語りと献詞
 
朗読法
 
 詩や文章を読み、心に訴えかける朗読は、儀式的要素の多いつどいでは効果的です。キャンプファイヤーやキャンドルサービスで活用し、心を震わせるつどいを演出します。
@ いい詩やいい文章を選ぶ……目的にあっているか、その季節や場所・メンバーにふさ わしいか。
A タイミングを作る……ハミングにかぶせる、無言無灯火の中で等。
B ふさわしい読み方をする
   振り返るもの(淡々と)
   明日を見つめるもの(明るく)
   心を見つめさすもの(低く、優しく、呼びかけるように)
   明日への方向指示(力強く胸を張って)
C 言葉をはっきりと……大きな声を出すのではなく、語尾をはっきりと言います。
D 詩や言葉の意味を十分理解する……詩や言葉の心が理解できれば、テクニックを知な くても上手な朗読ができます。
E 歌等とのバランスを考えて……まだハミングが続いているときには、ポイントの文章 を繰り返す等、バランスをとります。
F 間を大切に……詩や文章の心をくんで、普通、「とりすぎたかな」と思う位がよい。
G 大切な所では感情移入して……言葉に表情が出れば、具体的な言葉や意味が分からなくても、気持ちは伝わります。
 
ひとこと感想
 
 感動した経験や楽しかった思いをすべての人のものにします。みんなの前に出すことで、その思いややる気を確かなものにします。キャンプの節々で、そして、最後に「自分の言葉によるひとこと」を引き出すプログラムをもちます。
 
【すばらしい言葉を引き出すために】
@ 本番でベストを尽くせ……中途半端な活動からは、中途半端な言葉しか出てきません。
A サイレントタイムを前に置く……つどいの中に孤独の時間を置くことで、厳しく自分 を見つめさせます。自分を見つめてない言葉には、力がありません。
B スタッフがすばらしい言葉を……本当に感じたことや決意したことを本音として、短 くずばりと表します。
C 言葉が出しやすいムード作りを……「なんでもいいから……」というよりも、「キャ ンプとは」「キャンプ名言集」といった課題を指示することで、言葉が出やすくなるこ ともあります。
 
 
資料 語りの例
 
● ファイヤー教室でのオリエンテーション
 キャンプのメインイベントともいえるキャンプファイヤー。キャンプのすべてを持ち寄って共に囲む理想の火です。あなたはこのキャンプで、心が燃えましたか。このファイヤーで心を燃やしきり、「私のファイヤー」にしてください。ファイヤーの主役はあなたです。ファイヤーが楽しくなるのも、ならないのもあなた次第なのです。私たちは、そのお手伝いしかできないのです。
 キャンプファイヤーは、一部・二部・三部からできています。第一部では、燃え上がった炎をただ一つの理想として祈る儀式の時間です。したがって、入場のときから無言で、厳かに、心をキヲツケしなければなりません。炎を理想とするために、特別な儀式をします。心静かに祈ってください。笑ったり、声を出してはいけません。歌を歌うときは、あなたの理想に届くように大きな声で歌ってください。
 第二部では、明るく楽しいときをみんなの手で作り上げます。いよいよあなたの出番です。いやなことやつらいこと、すべてを忘れて、思いっきり歌い、踊り、楽しんでください。仲間との友情を深めてください。そのためには、心の殻を打ち破り、冷めた心を忘れて、おなかの底から声を出し、思いっきり動き回り、ばかになりきることが大切です。
 スタンツの時は、しっかり観て、しっかり拍手してください。あなたの応援が、すばらしいスタンツを引き出します。演じるときは、大きな声で、堂々と。
 第三部は、明日へ向かう火です。“ただ楽しかった”だけでは、本当の喜びは得られません。何かを手にしてください。自らを焦がして光と熱を与え、何の代償も求めないで大地に還っていく火を見つめながら、自分の生活を振り返ってみてください。共に楽しんだ仲間のすばらしさをかみしめてください。ここも第一部と同じように心静かに行い、おしゃべりはしないでください。お話しの中で、呼びかけや問いかけがあっても、心の中だけで答え、声には出さないでください。
* トーチサービスをするときは、トーチのもち方(前方斜め上にもつ)を説明します。 これから、ファイヤーで使う歌の練習をします。大きな声で歌ってください。ファイヤーの中では、「これから○○の歌を歌いましょう。1・2・3・ハイ」というようなことは言わないで、突然歌い始めますから、歌が始まったらすぐについて歌ってください。
* この後、歌やレクダンス、アクションソング等の練習をします。
 
● 点火の言葉
 (1)一人の場合
基本形この聖なる火を ここに集う仲間に捧げます
    ↑  ↑
(変化)青春の炎を燃やして ○○キャンプ場の、△△小学校の

 
 (2) 四人の場合
西 友情の火を暖かく燃やそう
団結の火を赤く燃やそう
理想の火を高く燃やそう
明日が見える火を明るく燃やそう

 
● つどいの言葉/火の話
 ファイヤーの四つの心(生の火、一つの火、自らを燃やす火、囲む火の輪)を大切にし、そのキャンプの願いとスタッフの祈りを織り込んで、ファイヤーにかける方向を示します。
(1) 幼時向き
 今、木が燃えはじめました。この太い木も、はじめはたった一粒の種でした。暖かくて明るい太陽の光を受けて芽を出し、小さな木になりました。小さな木は、1年、2年、5年、10年と毎日太陽の光を受けて、大地から栄養をもらい、雨で水をもらいたくさんの枝を伸ばし、大きな木になったのです。
 ここで燃えているのは、長い間ためてきた自然のエネルギーなのです。じっとこの炎を見つめましょう。この炎は自然からの贈り物です。楽しいキャンプファイヤーができるように、明るく、暖かくしてくれているのです。
(2) 小学生向き1
 燃え上がる火を見よう。生きている赤い火、暖かい火、生の火です。この火が人間と獣を分かち、私たちの文化を築く源となりました。昔の人は火を大切にしました。料理をしたり、灯火としたり、生活に欠くことのできないものだったからです。一方、火は恐ろしいものでもあります。取り扱いを間違うと、またたくまに野原や森や林を焼き尽くしてしまいます。ですから、私たちはこの火を大切に正しく使わなければなりません。
 この火をしっかりと見つめてください。自らを燃やし、私たちに光と熱を与えてくれるその姿は、思いやりの姿を教えてくれます。さあ、今夜はこの明るい火に負けないように、大声で歌い、笑い、踊り、心を開いてすばらしい思い出を作りましょう。
(3) 小学生向き2
 今、こうして燃えている火は、数分前まで何も見えなかったこのつどいに明るさを与えてくれ、一人一人の顔を見せてくれています。火は遠い昔から私たち人間に、生きる喜びや勇気を与えてくれました。火は自らを焼き尽くしながら、光と熱を与えてくれます。火は私たちの命ともいえるものです。この燃え上がる火を見ていると、体が暖まるだけでなく、心まで暖かくなってきます。今日は、そんな火の暖かさにドップリつかって楽しいキャンプファイヤーにしましょう。
(4) 中学生以上
 今、女神が運んでくれた炎が点火されました。この炎をじっと見つめてください。私たちに、協力、団結、理想、愛を語りかけてくれます。
 協力。薪が1本だったら、小さな火にしかなりません。それが何本も集まり、お互いがお互いを燃やし合い、協力して大きな炎になっているのです。
 団結。このファイヤーの井桁は、それぞれの薪が崩れる事なくしっかりと結び付いています。そして、空気が通りやすく薪が燃えやすいように組み合わされているのでよく燃えるのです。
 理想。たった一つの火です。高く神々しく燃える火は、暗闇の中で私たちを照らし、私たちに行く先を導いてくれます。少しでも、理想に近づきたいものです。
 最後は愛です。火は自らを燃やしながら明るさと暖かさを与えてくれます。火が燃えれば燃えるだけ、みんなを輝かせます。この暖かさと優しさは、自然を愛し、人の命を愛することに通じます。この炎を囲んで、楽しいつどいを過ごしましょう。
(5) 青少年向き
 “一期一会”という言葉があります。今の出会い、今このときはもう二度と還って来ないという意味ですが、まさに、今燃え上がっている炎とここに集った皆さんとの今の出会いはもう二度ともつことはできません。過ぎ去った一瞬を取り戻すことは決してできません。今燃えて、私たちに光と熱を与えてくれている薪は、その二度とない命をかけています。輝く一瞬一瞬を積み重ねることで、光り続けることができるのです。今日はあの薪のように、悔いのない時にしたいと思います。今夜は心のかみしもを脱いで、命を燃やして、明日につながる価値あるときを、あなたの歌声と、手拍子と、祈りを束ねて作り上げようではありませんか。
● 献詞

 このキャンプを通してよかったこと、感動したこと、思ったこと、分かったこと、そしてこれから何を努力しようと考えたのか……等をまとめて、言葉にします。

・ 楽しさは自分の手で作り出すもの。キャンプで学んだ体験を生かして、楽しいファイ ヤーを作ろう。                      ○班代表××××
・ わんぱく宣言!今夜も泥んこになります。私たちが主役になって頑張ります。
・ あと1日。残り少ない時間を、みんなの力ですばらしいものにしよう。
・ あのファイヤーのように赤く、熱く、明るく燃え上がろう。
・ 友情。そのすばらしさを大切にします。
・ みんなの協力で、すばらしいファイヤーにしよう。
・ 心を開きあって、すばらしいときを作ろう。
・ 熱い心。この燃え上がる火のように情熱をもとう。

● 誓いの言葉
・ このキャンプでたくさんの友達を得ました。この友情をいつまでももち続けます。
・ キャンプ生活で学んだ協力、仲間を大切にし、自分を省みることを忘れないで、これからの生活に生かします。
・ みんなと心を合わせ、友情を大切にします。
・ 燃え盛る炎のように熱く、強く、たくましい情熱をもち続けます。
・ 自分を高めて行く努力をします。
・ キャンプの体験を生かして、これからの生活を意義あるものにします。
・ 火が人々を暖めて慰めてくれたように、友達を優しく思いやり、友達を大切にします。
・ ありがとう炎、ありがとうみんな。今日の楽しさ、みんなの優しさ、決して忘れませ ん。

● 感謝の言葉
 すばらしいファイヤーをありがとうございました。私たちのために自らを燃やし尽くして光と熱を与えてくれたファイヤーありがとう。朝早くから夜遅くまで私たちのご指導くださいました先生、本当にありがとうございました。そして、こんなにもすばらしい思い出を作ってくれた自然にも感謝します。私たちも汗を流して、みんなの力でこのキャンプを作りました。このすばらしい体験をこれからの生活に生かしたいと思います。本当にありがとうございました。
 
● 分火の言葉
 今、みんなで共に作り上げたファイヤーが終わろうとしています。楽しかったこと、仲間と協力したこと、このキャンプで学んだことをみんなで分け合いたいと思います。心の中に“火”をともし、あなたの町、あなたの家、あなたの学校に持ち帰り灯し続けてください。 さあ、新しい希望に向かってたくましく歩み出してください。

● 語り
 ファイヤーが燃え尽き、己に返ったとき、エールマスターやサブリーダーが、そのキャンプの祈りや思想を伝えます。


(1) 輝く瞳
 ファイヤーが燃えて輝きました。みんなの瞳はどうですか。キラキラと一生懸命輝いていますか。汗を流して働いていたときの瞳は輝いていたよ。友達と協力しているときの瞳もきれいだったね。みんな一人一人違うけど、それぞれの光を一生懸命出して輝いている君が大好きだ。
(2) 心の中の炎
 小さな小さな火になりました。今にも消えそうな小さな火です。でも、私の心の中には大きな炎が燃え上がっているのです。そして、あなたの心の中にも。ファイヤーが大きく燃えているときは、明るく、みんなが輝き、みんなの顔がよく見えました。あなたが燃えることによって、友達が輝くのです。そんな、みんなを照らし出し、暖かくする炎を燃やし続けたいのです。
(3) 自然に返していけるもの
 ファイヤーを見てください。あんなに燃えていた火が大地に還ろうとしています。自らを燃やして、私たちに光と熱を与えてくれた木が、今大地に還ろうとしているのです。
 一体何本の木が燃えたのでしょう。ここでこうして燃えることがなければ、何年か、何十年か生きてきた命を、あと百年も千年も生きることができたかもしれない命を、私たちのために、わずか2時間のキャンプファイヤーのために、その命を燃やしてくれたのです。 私たちは、この木に対して、自然に対して何を返して行くことができるのでしょうか。今、自然界では人間のために多くの命が失われています。もう一度あなた自身に問いかけてください。「私は何が返していけるのだろうか」と。
(4) 人生
 静かに目を閉じて、心の目を空高く上げてみてください。ホラ、見えるでしょう。小さくなった火を囲むあなたが、あの人の顔が、仲間の姿が。私たち一人一人はちっぽけな人間です。地球の流れから比べればわずかな人生です。でも、その小さな生命、わずかな人生を精一杯生きています。私たち一人一人の営みが、人類の歴史を築き上げて来ました。隣の人としっかり手を握り合ってください。ぬくもりが、命の叫びが伝わって来ませんか。このぬくもりと命の輝きを大切にしたいものです。
(5) 仲間
 隣の人と握手してください。暖かい手、冷たい手、柔らかい手、ゴツゴツした手、いろいろな手だけれど、仲間のぬくもりがジーンときます。昨日までは顔も見たこともなかった人だけど、今はそばにいるだけでうれしくなります。今日からは、仲間とともに歩いて行きたいのです。
(6) 命
 炎は命にたとえられます。自らを焦がしてやがて消えて行く。炎が燃えるとき、光と熱とを出します。あなたの炎は、目を覆いたくなる光ですか、相手を輝かす光ですか。みんなが逃げ出す熱ですか、暖める熱ですか。炎はいつか消えていくものです。今このときにも、世界のどこかではだれかが、その命の炎を消しているでしょう。私の周りにも、昨日まで元気だったのに突然死んだ人がいます。病気で若くして人生を終えた子どもにも会いました。自らの命を断った子どもたちの話も聞きます。私たちだって、いつ命の炎が消えるかもしれないのです。人生は一期一会、一瞬一瞬の積み重ねです。悔いのない人生を送るためにも、今燃えてる炎をどのように燃やすかが大切なのです。
● 結びの言葉
 ファイヤーやキャンプでの生活、自然、仲間への感謝、燃え上がった心への持続、日常生活への方向指示等、キャンプを終えた後の生き方を示す方向と参加者への感謝を述べます。

(1) 学校向け
 すばらしいファイヤーでした。みんなが力を合わせて頑張ったからすばらしいファイヤーになりました。
 あんなに赤々と燃えていた炎も、今は静かに大地に還ろうとしています。でも、みんなの心の中には、赤々と燃え続ける炎が見えると思います。目を閉じると、一生懸命燃えているファイヤーと、その周りで楽しそうにしているみんなの顔が見えます。このすばらしい体験を一生持ち続けてください。このキャンプで学んだ協力の大切さや仲間のすばらしさを、これからの生活の中に持ち帰ってください。
(2) 一般向け
 いよいよこのファイヤーも終わりに近づきました。煙りに涙しながら作ったご飯、道に迷いながらのオリエンテーリング、消灯後も尽きることのなかった話し合い。すばらしい体験と友達を得たことと思います。このキャンプでの出会いをいつまでも大事にしてください。お互いの友情と信頼の火をともし続けてください。
 
 みんなで囲んだ火。あんなに燃え盛り、大きく明るかった火も、今はこんなにも小さくなってしまいました。やがてこの火は消えてしまいますが、皆さんの心の中の火は消えることがないでしょう。心の中の火が次々に広がり、仲間の和に、未来を照らす火になることを祈りましょう。
 
 一週間後の今日、私たちはどんな過ごし方をしているのでしょう。普段は、文明生活に慣れ切っている私たちです。でも、ここに集まって本当にすばらしいキャンプをもつことができました。この地球という自然の中で生きていることが確かめられました。
 私たちは、自然から何を感じ、火から何を学び、仲間から何を知ったのでしょうか。そして、仲間に何を贈ることができたのでしょうか。火はやがて消えていきますが、私たちの心の中に燃え上がる“火”を大切にし、いつまでも燃やし続けたいものです。


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