A.作詞教室
 
作詞の基本
 
 感動したことや怒り・悲しみ等の「だれかに伝えたい」という心の高まりを言葉で表現したものが“詩”です。その思いが通じたとき、聞く人に感動を与えます。そのためには、汗して感動を求め、己を鍛え、感性を育み、伝えるべき生き方・思想を持つことが大切です。
 
作詞の手順
 
  
作詞の方法
 
1.歌を作る気になろう
 まず、歌を作ろうという気持ちを高めることが一番です。心を届けるメッセージソングを作りたいのか、つどいのテーマ曲なのか、遊び歌なのか……、どんな歌を作りたいのか
を決めます。

  ● 使える歌を作ろう
@みんなで歌える歌楽しい歌、交互唱、輪唱、遊び歌、動作のある歌、
A対象を意識した歌親から子へ、子から親へ、仲間へ、恋の歌、青春歌、人間賛歌、自然、未来、希望、夢
Bテーマ曲その場所・地域・季節を歌う歌、つどいのテーマ曲、心を一つにする歌、雰囲気を盛り上げる歌、

 
2.テーマを決めよう
@ だれに訴えるのか……だれに歌いかけるのか(自分か、恋人か、仲間か、若者か、大 人か、子どもか等)を想定します。
A 何のために、どんな場所で訴えるのか……ショックを与えたいのか、惚れさすのか、 怒らせるのか、考えさすのか、共に歩もうと呼びかけるのか、テーマ曲として歌う の か、盛り上げるために歌うのか。また、つどいの会場で歌うのか、コンサートか、クラ スか、室内か、野外か……等、目的や場所を想定します。
B どんな思いを訴えるのか……心の奥底に眠っているものを見つめ、相手に訴えたい熱
 い想い、心の高まりを見つめます。
    テーマ
どんな思いで生きていくのか
どんな風に生きたいのか
何をしたいのか
人に言いたいことは
大切なものは
自分を何にたとえるのか
 生き方
 人生観
 信念
 思想


【テーマの求め方】
 テーマを訴えることは、共感を求めることです。そこで、感情(喜怒哀楽と願い)に働きかけます。
訴えたい項目と感情が交差する点を求め、そこでの自分の思いをテーマにします。
☆☆☆☆ 例 ☆☆☆☆
A平和と願い/いつまでも平和な世界を守って生きたい。
B仲間と喜び/みんな仲間だ、共に歩んでいこう。




3.テーマを表現する素材を見つけよう
 テーマを訴えるために、何にたとえて表現するのか歌の素材を見つけます。身近にある
ものを、自分自身の見方・考え方でとらえ直します。
            ● 自然は詩の宝箱
@ 海は生命の源、渦巻く潮、砕け散る波、命を育てる大地、雄大な山々、そよぐ風
A 光る若葉、芽吹く草、雑草の強さ、咲き誇る花、虫の声、羽ばたく鳥、流れる雲
B 青い空、雨の音、叫ぶ嵐、白い雪、眠る冬、燃える夏、秋の足音、輝く星
C 過ぎ去りし過去、今を生きる、未来への夢、歴史の重さ、時の流れ、明日への道 …………等。

 
● 対象と己の共通点を見つけよう
@ 前から、後ろから、横から、斜めから、上下から、ぐるっと対象や素材を見つめます。
A 心の奥底に眠っているものを公平な目で、己とテーマを見つめます。
B 対象と己、素材とテーマの共通点を見つけます。
4.ストーリーを考えよう
 伝えたい思い(テーマ)をみんなに分かってもらい共感を呼ぶために、ドラマを設定し、ムードを盛り上げ、心情をぶつけます。そこで、テーマと素材の共通点を見つめ、「何が
どうなればテーマが達成されるのか」一つのストーリーを考えます。
           ● ストーリーの構成要素
@ いつ……… 朝、昼、夜、季節、過去、未来、今日、明日等 例)近い将来
A どこで…… ふるさと、都会、海、山、空等   緑の大地を
B だれが…… 私、あなた、仲間、恋人、鳥、山の木々   子ども達が
C 何を……… 花、雨、船、雲   瞳を輝かせ
D どうした… 出会い、別れ、喜び、悲しむ等   走っている

 
5.言葉を引き出そう
 テーマや素材を元にして、感動する言葉を引き出します。
【連想法】
@ テーマや素材から連想する言葉を書き出します。(例)
A 気になる言葉を3つ選びます。
B その言葉から連想する言葉を3つ書く。
C 更に連想する言葉を1つ書く。
【三角法】
@ テーマを中央に書く。
A テーマから連想する言葉を3つ出し、上・左・右に書く。
B Aをキーワードとして、再び3つずつ言葉を出す。
 







6.キャッチフレーズを作ろう
 5で気になる言葉を肉付けして、キャッチフレーズを作ります。(例)走れ緑の大地
 
7.詩にまとめよう
 出てきた言葉やキャッチフレーズをベースにして、詩を組み立てます。
@ 一つの絵となって浮かび上がる情景を詩に書きます。
A 「美しい」というような抽象的な言葉でなく、具体的に描きます。
B テーマは説明ではなく、描写(様子、仕草、行動等)を通して描きます。
C 最初の二行が勝負。ドラマチックな出だしを工夫します。
D 一番の冒頭で、方向や状況を分からせます。
E ムードを十分作ってから、心情をぶつけ、テーマを盛り上げます。
F 新鮮な素材、表現を求めます。
G ドラマの状況や主人公の気持ちが伝わり、感動的で共感を誘うものを。
 
            ● 心理描写のポイント
 @ 生きざま……常に前向きの姿勢で、切々と歌い上げます。
 A 願望……絵空事にならないようにします。
 B 幸せ……主人公の幸せぶりや心のときめきを描写します。
 C 思いやり……説明的ではなく、描き出します。
 D 愛の告白……ドラマ設定をきちんとし、魅力的な口説き文句を。
 E 尽くす心……様子や仕草、動作で表現します。。
 F 孤独……リアリティーをもって浮かび上がるように。
 G 片思い……主人公のせつなさがありありと迫ってくるように。
 H 心変わり……相手の心変わりを描いたうえで、主人公の心情描写をします。
 I 別れ……別れのつらい心情を切々と浮かび上がらせます。
 
【替え歌式作詞法】
@ 元歌を決めて、十分に歌い込みます。
A 元歌の一部をキャッチフレーズと入れ替えます。
B テーマに沿って連想した言葉を、元歌の一部と入れ替えます。
C 入れ替えた言葉がつながるように、全部を組み替えます。
D できあがった詩に、全く新しい曲をつけます。
 
【三題噺式作詞法】
@ 気に入った言葉を3〜4つ位出します。
A テーマに沿ってその言葉をつなげ、一つのストーリーを作ります。
B リズムを求めて何度も読み返し、詩の形に作り直します。
C 贅肉を取るために、よりぴったりの言葉に置き換えます。
 
【はめ込み式作詞法】
@ メロディーを何回も聞いて、曲のイメージをつかみます。
A そのイメージから、素材やテーマを決めます。
B ストーリーを考え、詩を作ります。
C 曲の形式を整えて、各部分のメロディーの特徴やつながりを考えます。
D メロディーのリズムを見分け、言葉の字数をメロディーに合わせたり、語呂合わせを します。
 
【起承転結法】
 
 
 8.形式を整えよう
@ リズムを求めて、何度も読みます。(区切り、行変え、節変え)
A よりぴったりの言葉がないか置き換えてみます。
B 無駄を無くし贅肉をとるために縮めてみます。
【作詞のテクニック1】
@ ストーリー全部を語るのか、象徴的なシーンだけを語るのか。
A 一人の主人公を追って行くのか、多次元的にとらえるのか。
B だれの言葉で書くのか。(主人公か、ナレーターか、両者か)
【作詞のテクニック2】
* いたずらに技巧に走らないようにし、心の叫びに従わない限り使用しません。
* そのテクニックを使う必要があるかどうか問い直します。
* 使い古しでない新鮮な表現を求めます。
@ 比喩/心に食い込む……描こうとするものを、別の何かを借りて表現します。
・ 直喩/「AのようなB」の様に、間接的に例えます。(彼は山のような人です) 
・ 暗喩/AとBを、イメージで直接的に結び付けます。(彼は山です)
A 倒置法/意外性とパンチ……言葉の順序を逆にします。(山のような彼です)
B 体言止め/イメージを広げる……名詞で止め、その部分を強調し、アクセントをつけます。(彼は山)
C リフレイン/感情の強調……言葉やフレーズを繰り返します。リズムが生まれ、テーマがはっきりします。(山 山 山)
D 対句/説得力を増す……意味とか働きが相似した言葉やフレーズを並べます。
   (彼は山 彼女は海)
E 積み上げ/イメージを広げる……体言止めが元で、イメージが深まる言葉を積み上げていきます。(彼は大地 彼は山 彼は大空)
F 擬人化/ムードを出す……人間でないものを人間のように扱います。(山が歌う) 
G 呼びかけ・お願い/心情に訴える……何かに呼びかけるように表現します。
   (山の歌を聞いてください)
H 命令・質問/心情に訴える……何かに質問するように表現します。
   (山の叫び 聞こえますか )
I 方言・当て字を使う/親しみ……リズミカルな調子やおもしろみが出ます。
J 英語を使う/ナウい感覚……ナウい感覚が出てきます。
K 語呂合わせ(リズムを生み出す潤滑油)……リズミカルなものになります。
L 音数律(リズムを生み出す)……音数をそろえます。基本は、七五調、五七調。
 
【曲の形式に合わせて】
@ 一部形式……4+4小節/起承+転結
A 二部形式……4+4+4+4小節/起+承+転+結
B 三部形式……4+4+4小節、8+8+8小節/起+承+転結、起承+転+結
C その他………8+8+8+8小節/起+承+転+結
 
9.2番以降を作ろう
@ 何番まで作るかを設定します。
A 基本的なテーマは変えません。
B どこを変えるのか、どのように変えるのか、変えないところはどこかなどを決め、2番以降を作ります。
 
     ● 変える視点
時間の流れで昨日 今日 明日/過去 現在 未来/朝 昼 夜
季節や天候で春 夏 秋 冬/風 雨 嵐
場所や風景で海 山 空 星/故郷 街 都会/ここ 国 世界
視点の広がりで私 あなた 仲間 みんな/子ども 若者 大人
物語の展開で起 承 転 結

  
10.詩のバランスをチェックしよう
@ リズムやゴロはいいか。
A 意味不明な所はないか。
B テーマはぼやけていないか。
C 情景が見え、絵になっているか。
D ストーリーや設定はずれていないか。
E バランスはいいか。
F “私”が存在しているか。
 
11.タイトルをつけよう
 タイトルは作品の顔です。それだけにキラリと光るものが要求されます。人の興味を引くものが必要ですが、詩の内容と掛け離れたものでは行けません。タイトルと詩の内容をうまくフィットさせることが大切です。
@ テーマや素材をそのままタイトルにします。
A キャッチフレーズや詩の一部をタイトルにします。
B テーマ+詩の一部をタイトルにします。
C 映画や本などから借りてきます。
D 語呂合わせやナンセンスなタイトルをつけます。


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