4−9.救急法
救急法(応急手当)は、あくまで医師に渡すまでの一時的な手当です。ケガや病気がそれ以上悪くならないように努めます。
救急法のポイント
@ まず自分が落ち着いて、「心配するな」と患者を安心させます。
A ケガや病気の程度を判断し、冷静に「何をすべきか」、「何をしてはいけないか」を見極めます。
B 骨折か脱きゅうか分からないときは骨折のつもりで処置するなど、最悪の時を考えてやります。
C 意識を失ったときは、やたらと動かさないで原因を突き止める努力をします。
D 止血は素人はやたらとしません。まず傷口を心臓より高くし、傷口を直接押さえて血を止めます。
E すぐにあきらめないで、医師がくるまでは粘り強く続けます。
応急手当
1.外傷
(予防)長袖や手袋などで露出部を少なくします。
(手当)異物を取り除き流水で洗い流してから、傷を直接圧迫して出血を止めます。
A.擦り傷
@ 傷の周囲の土や砂を水で洗い流します。
A 清潔なガーゼでふき取り、リバノールなどで消毒します。
B.軽い切り傷
@ 少し出血させて、ゴミや細菌を出します。
A オキシドールで消毒し、アクリノールガーゼを当てて包帯をします。
C.出血のひどい傷
@ 包帯をやや強めに巻いて、出血部を圧迫します。
A 出血のひどいときは、心臓に近い部分を止血し、早く医師に見せます。
D.頭部の傷
血管が多いので出血量が多い。あわてずに圧迫時間を少し長めにして止血します。
@ 絶対安静にし、上半身を少し高くして寝かせ、頭部を冷やします。
A 意識が回復したら、流動食を与えます。
B 少し落ち着いてから病院に運びます。
E.コブ
@ 冷たいタオルで冷やします。
A 傷があるときは、傷の手当をした後に冷やします。
2.ものが刺さった
(手当)
@ 刺さった所をガーゼなどで包んで、医師に見せるのが原則です。
A 抜ける場合は刺さったものを取り、消毒します。
*無理に引き抜くと、傷をひどめる場合があるので注意します。
3.とげが刺さる
(症状)チクチクした痛み
(手当)
○ 毛抜きを使って取り除く(5円や50円硬貨の穴の部分を押し当てると抜きやすい)
4.指を挟んだ
(手当)
@ 痛みが激しい時は、骨折の可能性があります。
A 挟んだ指をボール紙などで固定し、隣の指と一緒に包帯を巻きます。
5.生爪をはがした
(手当)
@ 傷口を清潔な水で洗います。
A 消毒液で消毒し、はがれた爪を元の場所に戻して包帯をし、早めに病院に行きます。
6.靴ずれ
(予防)履き慣れた靴を履き、靴下をはいておきます。セッケンを塗ったり、セロテープを貼っておくのも効果があります。
(手当)
@ 消毒して、針でまめに小さな穴を空け水分を出します。
A ガーゼと絆創膏で固定します。
7.鼻血
(手当)
@ 上体を起こして座り、頭をやや上にあげ、鼻を10分くらいつまんでおきます。
A 止まりにくいときは、頭を冷やします。
8.車酔い
(予防)食べ過ぎや飲み過ぎ、寝不足、過労を避けます。便通を整えておき、乗車30分前に酔い止めを飲みます。車内では、歌を歌ったり、話をしたりして気を紛らわせ ます 。
(手当)
@ 窓を開け、冷たいタオルで顔や首筋を冷やします。
A 吐き気がしたら、我慢せずビニール袋の中へ吐きます。
9.こむら返り
(手当)
○ 足を伸ばした状態で足首を立て、ふくらはぎを伸ばすように親指をすねのほうに引っ張ります。
10.やけど
(症状)・第一度/赤く膨れて痛い
第二度/水ぶくれになったり、表面がただれて強く痛い。
第三度/皮膚が蒼白で針を刺しても感じなくなり、皮膚は壊死します。
・成人の場合は、第二度が全体の30%、子どもや高齢者では10%をこえると生命に危険があります。(やけどした人の指も含めた手のひらを1%として判定します。)
(手当)
@ すぐに水をジャージャーかけ続け、痛みのとれるまで(約20分)冷やします。
A 衣服のうえから熱湯を浴びた場合は、衣服のうえから流水で冷やします。
・衣類を外すときは、無理をせずにそっと外します。
B 水ぶくれは破らないようにし、空気に触れないように包帯をしておきます。
ひどいときは毛布でくるみ、医師に見せます。
11.打撲(うちみ)
(手当)
A.手や足
@ 患部をよく冷やし、冷湿布をします。
A 熱があって痛む間は冷やし、痛みがなくなったら温めます。
B はれがひどく、痛みの激しい時は医師に見せます。
B.頭や胸
@ 軽いと思っても、頭と上半身を高くし安静にします。
A 鼻や目、口から出血したり、瞳孔に異状があったり、失神や吐き気があれば医師に見せます。呼吸が止まった場合は、直ちに人工呼吸をします。
C.腹
@ 枕をしないで水平に寝かせます。
A 飲み物は絶対与えないで、安静にして1時間くらい様子を見ます。
B 吐く場合は、顔を横に向けます。
12.高山病、山酔い
(症状)頭痛、めまい、吐き気
(手当)
@ 身体を暖かくして、暖かい流動食を与えます。
A 日陰の風通しのよいところで寝せさせ、濡れタオルで頭を冷やします。
13.目のゴミ
(手当)
@ どんな場合にも目をこすらないようにします。
A 目を数回強くまばたきして、涙で異物を洗い流します。
B きれいな水の中で、目をパチパチしてみます。
C 異物が取れないときや目に刺さっているときは、早く眼科に行きます。
14.耳の中に異物が入る
(手当)
@ 虫が入ったときは、懐中電灯を耳に当て、光で誘い出します。
A 入った方の耳を下側にして、反対側の側頭部をトントンと数回たたきます。
*耳かきやピンセットを使うと、かえって押し込んでしまうことがあるのでやめます。
15.喉に異物を詰まらせる
(症状)呼吸できないときは、喉を指さしたり、指で押さえたり、つかむなどの動作。完全に軌道が閉塞すると急激に顔色が蒼白になります。
(手当)
@ 咳が出てれば、咳を続けさせます。首の後ろをたたき、吐き出させます。
A 意識がないときは喉の中を観察し、異物があれば取り除きます。必要に応じて人工呼吸をします。
16.捻挫、突き指
(症状)無理な力がかかって関節が腫れ、激しく痛みます。
(手当)
@ よく冷やして(15〜20分くらい)、冷湿布をします。
A 包帯で固定し、安静にしておきます。
B 2〜4日間冷やし、腫れが引いたら温めます。
17.脱きゅう
(症状)関節がずれて変形し、激しい痛みを訴え、関節運動が不能となります。
(手当)
○ 副木固定をして、医師に見ます。
18.骨折
(症状)ひどい腫れと、痛みと、変形が起こります。
(手当)
@ できるだけ動かさないようにして、痛みが激しい時は冷やします。
A 折れた部分の上下関節を含めて副木を当てて固定し、医師に見ます。
B 明らかな変形や短縮はひっぱて矯正し、固定します。骨折端が外に飛び出している場合は、傷口の消毒を十分して、引っ張って整復後固定します。
19.肉離れ
(症状)筋肉の急激な収縮によって、筋肉が切れたり、筋幕が破れ、痛くなったり力が入りません。
(手当)
@伸縮包帯かサポーターで固定します。
A氷のうや濡れタオルで冷やしながら病院へ運びます。歩かせたりしてはいけません。
20.アキレス腱の切断
(手当)
@ うつむきに寝かせて、つま先を延ばした形で、副木を用いて足全体を固定します。
A 立たせたり歩かせたりしないようにします。
21.体温低下
(手当)
@ 暖かい場所に移します。屋外であれば、たき火などで温めます。
A 濡れた衣服は脱がせ、毛布などで保温します。
22.ショック
(症状)体温や血圧低下。手足が冷たくなり、顔面蒼白で無表情、脈拍不整になります。
(手当)
@ 頭を低く、足を高くして寝かせ、胸部を楽にして、顔に冷たい水を注ぎます。
A 濃いお茶やコーヒーなどを飲ませて落ち着かせ、保温に努めます。
23.歯痛
(手当)
@ うがいをして、詰まっている食べかすを出します。
A 冷たいタオルで冷やします。
24.脳貧血
(症状)顔が青くなります。
(手当)
@ 頭を低くして、木陰に休ませます。
A 衣類をゆるめて楽にし、毛布などで保温します。
25.熱疲労
(原因)水と塩分を取らないために起こります。
(手当)
@ 安静にし、衣服をゆるめ両足を高くします。
A 食塩水(水10 に塩小さじ1/2 )、重曹水(水100 に重曹小さじ1/4 )を30分毎に飲ませます。
26.日射病、熱射病
(症状)発病は急激で、頭痛、疲労、めまい、視力の減退などが前兆として起こります。続いて人事不省となります。顔が赤くなります。
(予防)帽子をかぶり、風通しのよい服を着ます。適度の休憩と十分な水分をとります。
(手当)
@ 風通しがよく涼しいところで、衣服をゆるめ、頭を高くします。
A 頭を冷やし、身体には水をかけたりして冷やします。
B 意識が回復したら、スポーツ飲料などの水分を飲ませます。
C けいれんがひどく、意識がだんだんと不明になるときは急いで医師に見せます。
27.毒蛇にかまれる
(手当)
@ 噛み口に口を当て、毒を吸い出し、吐き出します。
A 心臓に近い部分を紐で縛ります。(静脈が軽く浮き出る程度)
B 医師に連絡し、早急に病院へ運びます。
28.毒虫に刺される
(症状)刺されると激痛、局所の発赤、腫れ、発熱、かゆみなどがおきます。
(予防)長袖の着用、虫を刺激しない
(手当)
@ すぐに引っ掻いたりしないで毒針が残ってないか調べ、毛抜きで抜きます。
A 刺された回りを押して口で毒を吸い出し、吐き出します。刺された所を水道水で洗浄すると同時に十分にうがいをします。(毒は水に溶け易い)
B 流水や氷で冷やします。赤く腫れ、かゆみが強いときは抗ヒスタミン軟膏を塗ります。
29.毒蛾に触る
(手当)
○ 触ったら、すぐに流水で洗い流し、抗ヒスタミン軟膏を塗ります。
30.かぶれ
(症状)かゆみを伴う炎症や水ぶくれ。
(手当)
○ 濃い石鹸水で5〜6回洗い抗ヒスタミン剤入り副腎皮質ホルモン軟膏を塗ります。
31.ジンマシン
(症状)ぶつぶつが出たり、かゆみがあったりします。
(手当)
○ なるべくかかないようにし、食物によるときは、吐き出させます。
○ 抗ヒスタミン剤を塗ります。
32.食物中毒・誤食
(手当)
@ たくさんのぬるま湯か塩水を飲ませ、指を喉に入れて吐かせます。
A 水か番茶の濃いものを飲ませて、早く病院へ。
*吐物や食べ残しを持参して、医師に見せるようにします。
33.腹痛
(手当)
@ 安静にし、ひざを曲げた姿勢で寝かせ、衣服をゆるめます。
A 嘔吐があれば、顔を横向きにします。
B 痛みが激しい時は、飲食物は与えてはいけません。
34.嘔吐
(手当)
@ 吐きたいだけはかせた後、うがいをさせます。
A 顔を横向きにして寝かせ、寒気がある場合は、毛布などで全身を保温します。
35.胃炎
(症状)みぞおちの圧迫感や疼痛、吐き気、下痢など
(手当)
@ 胃の中のものを吐かせる。下剤を与えるなど。
A 吐き気が止まったら、流動食から少しずつとっていくようにします。
B 健胃剤、消化剤などを内服します。
36.腸炎
(症状)下腹部に疼痛、めまい、吐き気、嘔吐とともに下痢、下痢のたびに腹痛等。
(手当)
@ 安静にして、下腹部を湯たんぽやカイロなどで保温します。
A 始めはお茶、後に流動食から与えます。
B 下痢止め剤を内服します。
*熱のある下痢はむやみに止めません。
C 整腸剤などを与えます。
37.虫垂炎
(症状)始めに上腹部全体、次いで右下腹部に激痛、手で押すとさらに痛く、手を急に離すとピンと響く痛みがあります
(手当)
@ 疑わしいときはすぐ病院へ。
A 絶食し、右下腹部に冷湿布して安静にします。
B クロマイセチンがあれば服用。
38.発熱
(手当)
@ 安静に寝かせ、頭部を冷やします。
A 寒気や震えがあるときは、毛布などで全身を保温します。
B 汗がひどいときは、全身をふいて着替えさせます。
39.感冒、流感
(症状)寒気、発熱、体がだるい、頭が痛い、腰痛、筋肉痛、関節痛、鼻詰まり、喉が痛い、せき、クシャミ
(手当)
@ 保温、安静を保ち、発熱や発汗があるときは十分に水を補給し、温かい食べ物を与えます。
A 解熱剤、風邪薬などを内服します。
40.肺炎
(症状)寒気やふるえがきて、急に高熱を出します。胸痛、せき、呼吸困難、唇や爪が紫色、かったんは血がまじったり、鉄錆色
(手当)
○ 保温、安静に努め、ズルファミン剤を内服。水を十分に取ります。
41.呼吸困難
(手当)
@ 衣服をゆるめ、楽な姿勢を取らせます。
A 呼吸に合わせて背中をさすります。
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